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熊の生息境界とクマップの紹介!

熊の生息境界とクマップの紹介!

はじめに

2026年が明けて、早くも3か月ほどが経ちました。皆さんは、昨年2025年の「今年の漢字」を覚えていらっしゃるでしょうか。 2025年の暮れに発表された「今年の漢字」は「熊」でした。 昨年はクマによる人的被害が各地で多く発生し、特に秋には連日のようにクマ関連のニュースや特集が報じられました。残念ながら人的被害も多く確認されています。筆者の実家は長野県にありますが、家から約200mほどの場所に巣穴が作られ、毎日のようにクマの目撃情報を知らせる有線放送が流れていたそうです。 地図の世界でも、昨年はクマ被害に関する話題が多く取り上げられました。今回のコラムでは、その一部をご紹介します。 

1)日本のクマ

まず「クマ」と一言でいっても、日本には二種類のクマが生息しています。 北海道に生息するエゾヒグマと、本州・四国に生息するツキノワグマです。 この二種の生息域を分けているのが津軽海峡です。津軽海峡はクマだけでなく、ニホンザル、ニホンカモシカ、ムササビなどの生息域の北限にもなっており、これらの動物は北海道には生息していません。 このように、地形や海峡などによって生物の分布が大きく変わる境界線のことを、生物地理学では「生物境界線」と呼びます。津軽海峡もその一つで、提唱者の名前にちなみ「ブラキストン線」と呼ばれています。 ちなみに、植物の生物境界線はこれよりやや北にあり、北海道黒松内町付近に位置しています。この地域にはブナ林の北限があり、国の天然記念物にも指定されています。 一時期、赤毛で大型の「ハイブリッド種」のツキノワグマ、すなわちエゾヒグマとツキノワグマの交雑種が東北に生息しているという話題がニュースで取り上げられました。しかし、この二種はブラキストン線によって明確に生息域が分かれており、流れの速い津軽海峡を自力で渡ることは極めて困難です。また、生物学的にも別種であることから、交雑種が生まれる可能性は極めて低いとされています。

 

図1 ブラキストン線(地理院地図より作成) 

2)クママップ

近年、クマによる被害が連日のように報道される中で、話題になったのが「クママップ」の存在です。 クママップとは、ユーザーからの投稿や目撃通報、ニュース情報などをもとに、クマの出没場所や生息情報を地図上にまとめたものです。 通常、このようなクママップは都道府県や自治体が個別に整備しており、表示方法や使い方はそれぞれ異なります。昨年には、全国のクマ情報を一元的に地図上で表示する「Kumamap」というサービスも登場しました。 今回のコラムでは、クママップの一例として、昨年クマ被害が特に多く報告された秋田県が公開している「ツキノワグマ等情報マップシステム クマダス」をご紹介します。

 

 

図2 クマダスの出没情報一覧ページトップ

クマダスは、秋田県内の獣害情報を一元的にまとめたマップで、ツキノワグマのほか、イノシシやニホンジカによる被害情報も掲載されています。 情報の種別は ・目撃 ・人的被害 ・痕跡(食害) ・痕跡(その他) の4種類に分類されており、期間を指定して検索することも可能です。 昨年、最も情報が多かったのは10月の1か月間で、これら四つの情報を合計すると5810件に達しました。それぞれの情報については、詳細な内容も確認することができます。 県内各地でツキノワグマの目撃が相次いだだけでなく、人的被害は公開されているものだけでも34件にのぼりました。昨年のクマ被害の深刻さを示す数字といえるでしょう。

 

 

図3 2025年10月のツキノワグマ出没情報

秋田市街地中心部に拡大してみると、市街地の中でも特に山地に近い場所で目撃情報が多いことがわかります。

 

 

図4 秋田市街地の拡大図

では、このコラムを執筆している2026年2月現在はどうでしょうか。 クマダスでは、2026年2月1日から2月20日までの期間で、14件の痕跡・目撃情報が公開されています。 ツキノワグマには(温暖な地域を除き)冬眠の習性があります。 この習性は「寒さをしのぐため」と思われがちですが、実際には冬の山に食料がほとんど存在しないために行われるものです。 しかし近年、人里近くに出没するクマの中には、冬でも食料が得られるため冬眠をしない個体が増えています。こうしたクマは「穴持たず」と呼ばれています。 つまり、冬だからといってクマの脅威が完全になくなるわけではないのです。

 

 

図5 2026年2月現在の出没情報

 

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は昨年の「今年の漢字」であるクマと、クマの出没情報を可視化するクママップについてご紹介しました。 自治体によっては、まだクママップが整備されていない地域もありますが、お住まいの都道府県や市町村に同様の情報サービスがあれば、ぜひ一度確認してみてください。 さて、もうすぐ春の行楽シーズンです。 内外地図本社ビル6階「地図ちず店」では、全国の地形図のほか登山関連の地図も多数取り揃えており、登山用として地図を購入されるお客様も多くいらっしゃいます。 低山の登山やハイキングであっても、天候やルートの確認に加え、クマの目撃情報を事前に確認しておくことが重要です。今回ご紹介したクママップなども活用し、安全で楽しい行楽シーズンをお過ごしください。 

 

参考サイト

・ツキノワグマ等情報マップシステム【クマダス】https://kumadas.net/sightings

・クママップについて - https://kumamap.com/ja/about

・熊についてよくあるご意見・ご質問 美の国あきたネット - https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/85123

・各都道府県のクマ出没情報まとめ - 防災手帳 | Yahoo!天気・災害 - https://emg.yahoo.co.jp/notebook/contents/article/bearsummary251114.html 

 

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