
このたくさんの引き出しはなんだろう?地形図の棚をのぞいてみた

みなさんは「地図」と聞いて、どんな地図を思い浮かべますか?
今ではスマートフォンで見ることが多くなりましたが、当社には今も全国の紙の地形図が並び、それを必要とする方々へ届けています。
今回は、紙の地形図を保管する棚と、地図を大切に扱うための工夫を一緒に見ていきましょう。
こちらが全国の地形図が並ぶ、当店の地形図コーナーです。
地形図とは、土地の高低や地形、道路、川、建物など、その地域の様子を詳しく表した地図です。
当店では、国土地理院が刊行する全国の地形図を取り扱っています。全国に流通する地形図の元売を担う会社は、当社を含めて2社です。購入の際に「このエリアの地図が欲しい」などとお伝えいただければ、販売担当者が用途や場所を確認し、該当する地形図を取り出します。数多くの地形図の中から目的の一枚を素早く探し出し、きれいな状態のまま取り出す。その手際のよさも、地図専門店ならではの光景です。
では、この珍しい地図棚の裏側には、どのような工夫があるのでしょうか?
地形図を扱う販売担当者にお話を聞いてみましょう。
今回は、販売担当のNさんへお話を伺いました。
〈地形図はどうやって並べている?〉
――地形図はどのような基準や分類で並んでいますか?
紙の大きさと折り加工がされているかによって保管場所が分かれています。
皆さんが地形図として思い浮かべる2万5千分1をはじめとした「柾判(まさばん)」という大きさの地形図については、当社では縮尺別に「20万分1地勢図名=総図名」ごとに管理しています。
2万5千分1は面数が多いため棚を数段に分けています。5万分1と2万5千分1には左上に「総図名+〇号」または「総図名+〇号-□」といった文字が印刷されており、その番号順に並んでいます。20万分1の範囲を16分割し、北東から南西に向かって1~16の番号を割り当てたものが総図名の後に続く「〇」号の数字で、5万分1の図郭と重なります。5万分1をさらに4分割して北東から南西に1~4の番号を割り当てた数字が「□」の数字で、2万5千分1の図郭に該当します。
この番号はいわば地形図の「住所」のようなもので、この番号を頼りに棚から必要な地形図を取り出しています。 また、棚の上部には、収納している範囲を赤枠で示した一覧図を置き、ひと目で分かるようにしています。
――この棚は地形図を管理するための専用の棚ですか?なにか特徴があれば教えてください。
1段に180枚程度収納可能ですが、実際はそれより枚数を抑えて収納しています。 書店やスポーツ用品店等でスチール製の地図棚を目にすることがあると思いますが、当社で主に使用しているのは引き出しの前面が開いている木製の地図棚です。底面に穴が開いていることで地形図を持ち上げやすく、取り出しもしやすい仕様になっています。
――管理するとき工夫していることはありますか?
なるべく破損や汚損を避けるようにしています。地形図に触る機会が増えるほど破損リスクは高くなるため、在庫枚数の多い地形図については別棚で保管し、普段出し入れを行っている棚の枚数が少なくなったら補充する等の対策をしています。 紙地図は湿気や乾燥の影響も受けやすいため、適切な在庫数になるよう考えています。他には前述の通り総図名と番号で管理しているので、出し入れの際には図番号を間違えないようにしています。
――地形図を取る時意識していることはありますか?
地形図の紙は破れや折れに強い仕様ではありますが、破損しにくい地形図のめくり方や取り出し方をしています。取り出すだけではなく地形図を所定の場所に入れる際にも、破損のリスクを抑えた方法で収納しています。見るのと実際にやってみるのでは印象が変わる作業です。紙と紙の間に空気を入れると楽に出し入れができますが、棚の構造上空気を入れたままにしておくと、棚を動かす際に地形図が滑り落ちて破損する可能性があります。 地図棚で作業する時だけでなく梱包時にも言えることですが、四辺を揃えて紙の間の空気を抜くことも地形図を取り扱う際には意識して行っています。
――よく売れる地形図はどんなものですか?
地形図全体では「槍ヶ岳」「穂高岳」あたりでしょうが、当社では学校注文で同じ地形図を200枚以上注文いただく時があります。それ以外ではやはり山関係が多く売れます。縮尺については更新されている2万5千分1が一番売れていますが、価格改定されたこともあり最近は5万分1の購入も増えている気がします。
――ちなみに、よく売れる地形図を取り出しやすい場所に管理したりしているのでしょうか?
学校の授業やグループでの登山等で同じ地形図の購入が続く場合には出しやすい棚に置くこともありますが、基本的にはしていません。あくまで地図に記載の番号で出し入れしています。
〈最後に、地形図の楽しみ方を聞いてみました〉
――お気に入りの地形図や、ぜひ皆さんに知ってほしい地形図、珍しい地形図などがあれば教えてください。
今日においては全国の地形図を揃えている店舗自体が珍しいのではないかと思います。当社では行くことが難しい離島の地形図も販売しています。 お気に入りの地形図はご自身で探してみていただけたら幸いです。見つけるお手伝いをさせていただきます。
――地形図のおすすめの使い方はありますか?
お気に入りの場所やご自身の住んでいる所の地形図を一度見てみるのはいかがでしょうか。紙地図ならではの表現もあるので、Web地図との違いを探してみるのも面白いかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
特に印象に残ったのは、「紙の間の空気を抜く」というひと手間でした。大きな紙である地形図をきれいな状態で届けるために、日々の作業の中には、こうした細かな工夫が積み重ねられています。今回の内容を通して、少しでも地図や地形図に興味を持っていただけたら嬉しいです。
地図を取り巻く環境は、紙からデジタルへと大きく変化しています。それでも、地図を正確に整理し、必要とする方へ確実に届けるという役割は変わりません。
また、地形図を中心にご紹介しましたが、当店には地図グッズや書籍など、ほかにもさまざまな地図に関連する商品が並んでいます。
全国の紙の地形図がずらりと並ぶ光景は、今ではなかなか見ることができない光景です。
お近くにお越しの際は、地図を眺めに、ちょっと遊びに来てみるのもいいかもしれません。